Webサイトの相談を受けていると、多くの場合は「まずは必要な情報を載せたい」「今の業務に合った形で始めたい」という、自然で現実的な前提からスタートします。
しかし数年後、「そこまで大きくなるとは思っていなかった」「ここまで機能が増えるとは想定していなかった」という状況に直面するケースは少なくありません。
振り返ると、その想定外の変化が、後々の負担を生む原因になっているということがよくあります。
この記事では、なぜ最初の判断が後から効いてくるのか、そしてどんな視点で判断しておくべきだったのかを整理します。
なぜ最初の判断で決まるのか
Webサイトは、後から追加された要素よりも、最初にどんな前提で組み立てられたかの影響を強く受けます。
たとえば、
- 「情報を載せるだけ」の前提で作ったサイトに、後から会員機能を追加する
- 「更新は年に数回」の想定で組んだ構成に、日常的な更新が必要になる
- 「ページは10ページ程度」と考えていたものが、100ページ規模になる
こうした変化が起きたとき、初期の判断がその変化を想定していないと、修正のたびに確認や調整が増え、対応コストが一気に跳ね上がります。
結果として、「部分的に直すより、作り直した方が早い」という判断に至ることも珍しくありません。
よくある判断ミスのパターン
1. 今見えている範囲だけで判断する
作り始める段階では、
- 今ある情報を載せられれば十分
- 現在の業務フローに合っていれば問題ない
と考えるのは自然です。
ただし、その状態が今後も続くとは限りません。
- 事業内容が変わる
- 扱う情報が増える
- サイトに求められる役割が変わる
こうした変化を前提にしないまま進めると、後から「これ以上は対応しづらい」という壁にぶつかります。
2. 業務に近づく可能性を見落とす
最初は単なる情報掲載サイトだったものが、
- 利用者がログインして操作する
- データを登録・管理する
- 社内業務の一部を担う
といった役割を持ち始めることがあります。
この時点で、そのサイトは「見るための場所」から、業務を支える仕組みに近い性質を帯び始めています。
にもかかわらず、初期判断が情報掲載前提のままだと、機能追加や変更のたびに無理が生じます。
3. 暫定の判断が、そのまま使われ続ける
初期段階では、
- まずは動くものを用意したい
- 予算や時間に制約がある
- 実際に使ってみないと分からない
といった理由で、暫定的な判断をすることも多くあります。
問題になりやすいのは、その「暫定」が、そのまま数年使われ続けることです。
その間に修正や機能追加を重ねた結果、全体の把握が難しくなり、手を入れるたびに負担が増えていきます。
作り始める前に確認しておきたい3つの質問
最初の判断を誤らないために、作り始める前に次の点を整理しておくことが有効です。
質問1: このサイトは、どの程度変化しそうか?
- 情報量は増えそうか
- 更新頻度は上がりそうか
- 扱う内容の種類は広がりそうか
変化が想定されるなら、それに耐えられる前提で判断しておく必要があります。
質問2: 途中で役割が変わる可能性はあるか?
- 情報掲載で終わるのか
- ログイン機能やデータ管理が必要になるか
- 業務フローの一部を担う可能性はあるか
可能性が少しでもあるなら、その前提を無視して作るべきではありません。
質問3: 判断の前提を言語化できているか?
- なぜこの形にしたのか
- 何を想定して、何を想定していないのか
- 将来変わるとしたら、どこが変わりそうか
これらを言葉にできていない場合、後から判断を見直すことが難しくなります。
判断を誤った場合に起きやすいこと
最初の判断を誤ると、次のような状況に陥りがちです。
- 機能追加のたびに、影響範囲の確認に時間がかかる
- 表示や処理があちこちに分散し、全体像を把握しづらくなる
- 修正のたびに費用と時間がかかる
- 結局、作り直す判断になる
これらは個々の実装の問題ではなく、最初の前提設定の問題が積み重なった結果です。
結論
Webサイト制作で後から問題になるのは、実装やデザインそのものではなく、作り始める時点での前提と判断です。
- 今どう見えるかではなく、どう変わっていきそうかを考える
- 変化の可能性を織り込んで判断する
- 判断の根拠を言語化した上で設計に落とす
作り始める前に一度立ち止まり、前提を整理しておくことが、後で苦労しないための最大のリスク対策になります。